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第2章

仮面城(日文版)-第2章

小说: 仮面城(日文版) 字数: 每页4000字

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 ところが、桜並木を百メ去毪郅嗓窑à筏皮郡趣长恧恰⑽难澶膝膝盲趣ⅳ毪长趣藲荬膜い俊
 あのおばあさんははたして、大野健蔵というひとの、仲のよい友だちなのだろうか。いやいや、さっきのことばのようすでは、なんだかそうではないように思われる。そのしょうこに、大野健蔵という名まえを口にしたとき、おばあさんの目が、なんとなく意地悪そうにかがやいたではないか。あのおばあさんは大野健蔵というひとの味方ではなく、ひょっとすると敵ではないだろうか。
 それからまた、文彦はこんなことにも気がついた。
 あのおばあさんが、大野健蔵というひとをたずねてきたのは、あのひともまた、きょうのテレビを見たせいではないか。それで、大野健蔵というひとのいどころを知り、それでああして、押しかけていくのではあるまいか……。
 少年の心のなかには、おとなもおよばぬするどさがやどっていることがある。とっさのあいだにこれだけのことを考えると、文彦はこんどはきゅうに、大野健蔵というひとのことが心配になってきた。そこでまた、まわれ右をすると、大急ぎでさっきのところまできたが、そのときにはもう気味の悪いおばあさんのすがたは、どこにも見あたらなかった。
 文彦はしかしもうためらわなかった。ムギ畑のあいだの道を、ズンズンすすんでいくと、間もなく雑木林にそって道が曲がっている。そのへんまでくると、あたりはいよいよさびしく、どこにも人影は見あたらない。
 道のいっぽうはふかい雑木林になっていて、反対側には、流れの早い小川が流れているのだ。そして小川のむこうは、ふかい竹やぶである。
 文彦はしばらくその道を步いていったが、すると、曲がりくねった道のほうから、急ぎ足にこちらのほうへやってくる足音が聞こえてきた。文彦は立ちどまって、その足音を聞いていたが、きゅうに顔色をかえると、かたわらの雑木林にとびこんで、草のなかに身をふせた。足音のなかにまじっている、コトコトというつえの音を聞いたからだった。
 むこうからやってきたのは、はたしてさっきのおばあさんだった。おばあさんは息をきらしてあたふたと、文彦のかくれているまえまでくると、そこでふと立ちどまって、鋭い目であたりを見まわすと、いままで弓のように曲がっていた腰を、きゅうにシャンとのばしたではないか。
 文彦は思わずアッと息をのみこんだ。ああ、このひとはおばあさんではないのだ。おばあさんのまねをしているだけなのだ。ひょっとするとこのひとは、男ではないのだろうか。
 あやしいひとは、また鋭い目であたりを見まわすと、やがてつえを草の上において、土手をくだってむこうの小川のふちへおりていった。そして、ジャブジャブと手をあらっているようすだったが、それがすむと、草の上においたつえをとりあげ、それをまたジャブジャブとあらった。
 そして、それにきれいにぬぐいをかけると、道の上へあがってきて、それからもう一度、鋭い目であたりを見まわすと、いままでシャンとのばしていた腰をふたたび弓のように曲げ、コトコトとつえをついて、雑木林のむこうへ消えていった。
 あまりの気味悪さに、文彦の心臓は、はやがねをつくようにおどった。あやしいひとの足音が聞こえなくなってからのちも、文彦はずいぶん長いあいだ、草のなかにかくれていたが、やっと安心して、雑木林から逃げだしたときには、からだじゅうがべっとり汗でぬれていた。しかも、そのとき文彦は、まだまだもっと恐ろしいものを見たのである。あやしいひとがさっきつえをおいた草の上を見ると、べっとり赤くぬれているではないか。文彦はおそるおそる指でさわってみて、すぐに、それが血であることに気がついた。
 ああ、さっきのひとは、小川で血のついた手をあらっていたのだ。

     白髪の老紳士

 文彦が臆病な少年だったら、もうそれ以上がまんすることはできなかったにちがいない。きっとその場から逃げだして、家へ帰ったにちがいない。
 ところが文彦はたいへん勇敢な少年だったので、それを見ると反対に勇気が出てきた。文彦は大急ぎで、いまあやしいひとがやってきたほうへ走っていった。
 すると、ものの五十メ去毪猡い胜いΔ沥恕ⅳ啶长Δ韦郅Δ槁劋长à皮郡韦稀ⅳ堡郡郡蓼筏けQだった。どうやらひとを呼んでいるらしく、かわいい少女の声のようなのだ。
 文彦はそれを聞くと、いよいよ足を早めて走っていったが、すると、きゅうに雑木林がとぎれて、一軒の洋館が目のまえにあらわれた。見るとその洋館の窓から、文彦とおなじ年ごろの少女が、半身をのりだし、両手をふって、金切り声をあげているのだ。
 文彦はそれを見ると、むちゅうで門のなかへとびこんだ。門から玄関までは二十メ去毪椁いⅳ搿N难澶悉饯蔚坤颏啶啶沥澶Δ亲撙盲皮い取⑿vからなかへとびこんだが、そのまえに、ちらりと玄関のわきにかかっている表札を見ることを忘れなかった。
 その表札には、たしかに、大野健蔵という四文字。
 文彦はハッと胸をおどらせると、少女の叫んでいる、左側のへやへはいっていったが、そのとたん、思わずアッと立ちすくんでしまった。
 そこは二十畳じきもあろうと思われる、広い、そしてぜいたくな洋間だった。いすからテ芝搿⒎櫎违‘テンから床のしきもの、なにからなにまで古びてはいるものの、金目のかかったりっぱなものばかりである。
 そのりっぱな洋間の中央に、頭の白い老人が、うつむけになって倒れていた。しかも、まっ白な頭のうしろには、大きな傷ができて、そこから恐ろしい血が|噴《ふ》きだしているのだ。
「あ、こ、これはどうしたのです?」
 文彦がたずねると、
「どうしたのか、わたしにもわかりませんの。いまお使いから帰ってみると、おとうさんがこうして倒れていたんです」
 少女は頭をおかっぱにして、かわいいセ椹‘服を着ている。
「このひとはきみのおとうさんなの?」
 少女は涙のいっぱいたまった目で、コックリとうなずいた。
「それじゃ、表札に出ている大野健蔵さんというひとは、このひとのことなの」
 少女はまたコックリとうなずいたが、そのときだった。
 大野健蔵という名が耳にはいったのか、床に倒れていたひとがかすかに身動きをすると、
「だ、だれだ……|香《か》|代《よ》|子《こ》……だれかきているのか……」
 と、弱々しい声でつぶやいた。
「アッ。きみ、香代子さんというの。おとうさん、気がおつきになったようだよ、なにか薬はないの?」
「あら、わたし、忘れていたわ、すぐ取ってくるわ」
 香代子は大急ぎで、へやからとびだしていったが、そのあとで、床に倒れていたひとは、よろよろと起きなおった。
 年はまだ、五十まえだと思われるのに、頭の毛はもう雪のようにまっ白だ。そしてなんとなく、上品な感じのする紳士だったから、文彦はホッと胸をなでおろした。このひとならば悪人ではない。……白髪の紳士は床から起きなおったが、まだ頭がふらふらするらしく、足もとがひょろついているので、文彦は大急ぎでいすを持ってきてあげた。
「おじさん、これにおかけなさい。あぶないですよ」
「ありがとう、ありがとう……」
 白髪の紳士はよろよろといすに腰をおろすと、はじめて文彦に気がついたように、
「おや、きみは……?」
「おじさん、ぼく、竹田文彦です。きょうのテレビを見てやってきたんです。おじさん、なにかぼくにご用ですか?」
 竹田文彦という名を聞いたとたん、白髪の老紳士の顔色がサッとかわった。
 ああ、このひとは文彦に、いったい、どのような用事があるというのだろうか。

     地底の音

「文彦――おお、きみが文彦くんだったのか」
 白髪の老紳士の顔には、サッと喜びの色が燃えあがったが、すぐにまたいたそうに顔をしかめて、
「香代子は……香代子はどうした?」
「香代子さんならいま薬をさがしにいきました。おじさん、いったいどうしたんですか?」
「いや、なに、年をとるとしかたないもんでな。足をすべらせて、|暖《だん》|炉《ろ》のかどにぶっつけたのじゃ。ははは……」
 文彦は思わず相手の顔を見なおした。
 このひとはうそをついている。このひとはさっきの老婆のステッキで、なぐり倒されたのにちがいないのだ。それなのに、なぜこんな見えすいたうそをつかねばならないのだろう。……文彦はなんとなく、気味が悪くなってきたが、そこへ香代子が薬とほうたい[#「ほうたい」に傍点]を持ってきた。
 そこで文彦も手伝って、応急手当てをしたが、幸い傷は思ったより、ずっと軽かった。
「おとうさま、お医者さまは……?」
 香代子が心配そうにたずねると、
「いいんだ、いいんだ、医者なんかいらん」
 そのことばつきがあまりはげしかったので、文彦はまた、相手の顔を見なおしたが、すると老紳士も気がついたように、にわかにことばをやわらげて、
「香代子、おまえはむこうへいっておいで、わしはこの少年に話があるから」
 香代子は心配そうな目で、オドオドとふたりの顔を見ていたが、それでもだまってへやから出ていった。
 あとには老紳士と文彦のふたりきり。老紳士は無言のままくいいるように文彦の顔をながめている。文彦はなんとなく、きまりが悪くなってうつむいてしまったが、そのときだった。文彦は老人のほかにもうひとり、だれかの目がジッとじぶんを見ているような気がしてハッと顔をあげて、へやのなかを見まわした。
 まえにもいったとおり、そこはたいへんゼイタクなへやなのだが、なにもかも古びていて、なんとなく陰気な感じがするのだ。しかし、そこには老人と、文彦のほかにはだれもいない。それではじぶんの気のまよいだったのかと、文彦は老人のほうへむきなおろうとしたが、そのとき、ふとかれの目をとらえたのは、暖炉の横のほのぐらいすみに立っている、大きな西洋のよろいだった。
 文彦はハッとした。ひょっとするとあのよろいのなかにだれかひとが……だが、そのとき老人の声が耳にはいったので、文彦はやっとわれにかえった。
「文彦くん、なにをキョトキョトしているんじゃ。わしのことばがわからんかな。きみのおとうさんの名まえはなんというの?」
「あ、ぼ、ぼくの父は竹田|新《しん》|一《いち》|郎《ろう》……」
「香港でなにをしておられた?」
「貿易会社の社長でした」
「おかあさんの名は?」
「竹田|妙《たえ》|子《こ》といいます」
「いまどこに住んでいるの?」
 まるで口頭試問をうけているみたいである。
 文彦の答えに耳をかたむけていた老紳士は、やがてふかいため息をついて、
「文彦くん、きみはたしかにわしのさがしている少年にちがいないと思うが、念には念をいれたい。左の腕を見せてくれんか。また、さっきのようなことがあっては……」
 さっきのようなこととはなんだろう。そしてまた、なぜ左の腕を見せろというのだろう。……文彦はまた、なんとなくうす気味悪くなってきたが、そのときだった。あの奇妙な物音が聞こえてきたのは……。
 どこから聞こえてくるのか、隣のへやか、天じょううらか……いやいや、それはたしかに地の底から聞こえてくるのだ。キリキリと、時計の歯車をまくような音。……それがしばらくつづいたかと思うと、やがてジャランジャランと、重いくさりをひきずるような音にか

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