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第19章

仮面城(日文版)-第19章

小说: 仮面城(日文版) 字数: 每页4000字

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「まあ、おにぎやかですこと。みなさま、なにを笑っていらっしゃいますの」
 そのひとは|森《もり》|美《み》|也《や》|子《こ》といって、おなじ町に住んでいる娘だが、良平の一家がこちらへひっこしてきてから、親しくなり、ちかごろでは欣三おじさんの、仕事の手伝いをしているのだった。
「やあ、美也子さん、いらっしゃい。なにね、良平のやつが、おもしろいことをいうものですから……」
 と、欣三おじさんがいまのいきさつを話して聞かすと、美也子はふきだすかと思いのほか、見る見るまっ青になった。
「まあ、それじゃこれが、杉勝之助というひとの剑胜螭扦工巍
 と、そういう声がなぜかふるえているようなので、一同はおもわず顔を見合わせた。
「そうですよ、美也子さん。あなたは杉という男をごぞんじですか」
「はあ、あの、ちょっと……」
 と、そういったかと思うと、美也子はきゅうにハンカチをだして、目を押さえたので、欣三おじさんもおかあさんも、いよいよびっくりして目を見合わせてしまった。
 美也子は、やがて涙をふいてしまうと、
「しつれいいたしました。つい、むかしのことを思いだしたものですから……わたし、杉さんというかたにおうらみがございますの。でも、あのかたをおうらみするのは、わたしどもの思いちがいかもしれないんですの。なにしろ、あのかたは死んでしまわれたので、おたずねするわけにもまいりませんし……」
「美也子さん、それはいったいどういうことですか。杉がなにか悪いことでも」
「それはいつか、おりがあったら申しあげますわ。わたしどもの思いちがいだったとしたら、杉さんにたいへんしつれいなことですから……それより、先生、お仕事をつづけましょう」
 それを聞くとおかあさんは、良平の手をとって、
「そう、それじゃ良平、しつれいしましょう。おじさまのお仕事のじゃまをしてはいけませんからね。美也子さん、ごゆっくり」
「おくさま、たいへんしつれいいたしました」
 美也子はなんとなく、かなしそうな顔をして、おかあさんや良平に頭をさげた。
 その晚、良平はじぶんのへやへ帰ってきても、美也子のあのかなしそうな顔が、気になってたまらなかった。
 それというのが良平は、美也子がたいへんすきなのである。美也子はとてもきれいで、やさしくて、だれにもしんせつだった。そして、なにをさせてもよくできるのだ。おかあさんもおじさんも、美也子の頭のよいのをほめている。それに美也子は、たいへんふしあわせな身の上なのだった。
 美也子はむかしからこの町に住んでいるのだが、まえに住んでいた家は、とてもりっぱな、大きなうちだった。
 それが戦争からこっち、だんだんびんぼうになり、家もてばなさなければならなくなったうえに、おとうさんがきゅうに亡くなったので、いまではおかあさんとたったふたりで、みすぼらしい家にすんでいるのである。
 なおそのうえに、おかあさんが、長い病気で寝ているので、いよいよこまって美也子が、はたらく口を見つけなければならなくなったが、ちょうどそのころ、ひっこしてきたのが良平の一家であった。
 欣三おじさんは美也子の気のどくな事情を聞くと、じぶんの仕事の、手伝いをしてもらうことにした。
 欣三おじさんは小説家だが、小説を書くためには、いろいろ材料をあつめたり、眨伽郡辘筏胜堡欷肖胜椁胜ぁC酪沧婴悉饯尾牧悉颏ⅳ膜幛郡辍ⅳ蓼俊頃^へいって、いろいろなことを眨伽郡辍⒃澶危濉钉护ぁ罚鼤钉筏纭筏颏筏郡辍ⅳ丹皮悉蓼俊ⅳ袱丹螭韦筏悚伽毪长趣蚬P記したりするのだが、頭がよいので大だすかりだと、おじさんは、とてもよろこんでいるのである。
 こうして美也子が毎日のように、おじさんのところへ出入りをしているうちに、良平はとても美也子がすきになってしまったのだ。
 そこで、あるときおかあさんに、
「ねえ、おかあさん、美也子さんみたいなひとが、おじさんのおよめさんになるといいね」
 と、しかつめらしい顔をしていうと、おかあさんはびっくりして、良平の顔を見ながら、
「まあ、良平ったら、なにをいうの。あなたはまだ中学の一年ぼうずじゃないの。そんなこと考えるもんじゃありませんよ」
「だって、美也子さん、とてもいいひとだもの。それに頭もいいし、おじさんのお手伝いだってよくできるんだもの」
「だめ、だめ、子どもがそんなこというもんじゃありません」
 おかあさんはそういって、良平をたしなめたが、しかし、その顔を見ると、少しもおこっているようではなくて、かえって、ニコニコしているのだった。
 その美也子が、杉勝之助というひとの剑蛞姢啤ⅳ嗓Δ筏皮ⅳ螭胜似坤筏郡韦⒚酪沧婴献詺ⅳ筏郡趣いμ觳呕窑恕ⅳ嗓螭胜Δ椁撙ⅳ毪韦坤恧Δ
 そのとき良平の頭にフッとうかんだのは、きょう古道具屋であった、あの気味の悪い男のことである。あの男はとてもあの剑颏郅筏盲皮い郡ⅳⅳ欷摔悉胜摔ⅳ栅い铯堡ⅳ毪韦扦悉ⅳ毪蓼い
 そう考えると、あの気味の悪い悪魔の画像に、なにかふかい秘密がありそうに思えて、良平は胸がワクワクしてくるのだった。

     すすり泣く声

 その晚の真夜中ごろのことである。
 良平はねどこのなかで、ふと目をさました。どこかでひとのすすり泣くような声が、聞こえたような気がしたからだった。
 良平はハッとして、くらがりのなかで耳をすました。すすり泣く声はもう聞こえなかったが、間もなく、ガタリと、なにかの倒れるような音がした。
 良平は、ハッと、ねどこからはねおきた。
 いまの物音は、たしかに応接室から聞こえたのだ。
 良平のあたまに、そのとき、サッと思いうかんだのは、応接室にある悪魔の画像のこと。それと同時に、古道具屋であった、あの気味の悪い男の目つきやことばを思いだすと、良平はなんともいえぬ恐ろしさを感じないではいられなかった。
 ひょっとすると、あの男が、悪魔の画像をぬすみにきたのではあるまいか……。
 良平は心臓がガンガンおどって、全身からつめたい汗がにじみ出るのを感じた。
 しかし、良平はすぐに、じぶんがこわがっていてはいけないのだと考えた。ちょうどそのころ、おとうさんは仕事のために、十日ほどの予定で、関西のほうへ旅行しているさいちゅうだったので、じぶんがしっかりしなければいけないのだと決心したのである。
 良平はそっとねどこからぬけだすと、離れにねているおじさんをおこしにいった。
「おじさん、おじさん、おきてください」
 くらがりのなかでおじさんをゆすぶっていると、応接室のほうからまたへんな声が聞こえてきた。だれかがすすり泣いているのだ。それを聞くと良平は、全身につめたい水をかけられたような、恐ろしさと気味悪さに、ガタガタとふるえながら、
「おじさん、おじさん、おきてください」
 ゆすぶっていると、おじさんはやっと目をさました。
「良平か。どうしたんだ。いまごろ……」
「おじさん、応接室のなかにだれかいるんです」
「どろぼう?」
 おじさんはびっくりしてはねおきた。
「ええ、でも、だれか泣いているんです」
「泣いている?」
 くらがりのなかで、ふたりが耳をすましていると、応接室のほうで、またガタリと物音がした。それを聞くとおじさんは、ねどこからとびだし、くらがりのなかで帯をしめなおして、へやから出ると、
「良平、おかあさんは?」
「おかあさんは知らないようです」
「よし、じゃ、そのままにしておけ。びっくりさすといけないから。良平、おまえじぶんのへやへいって野球のバットを持ってこい」
 良平がバットを持ってくると、おじさんは、それを片手にひっさげて、応接室のドアのまえまでソッとしのびよった。良平もそのあとからくっついていく。心臓がガンガンおどって、胸がやぶれそうだった。
 応接室のなかにはたしかにだれかいるのだ。ガサガサという音が聞こえる。しかし、ふしぎなことにはそれにまじって、ひくいすすり泣きの声が聞こえるのである。
 おじさんもそれを聞くと、さすがにギョッとして、息をのんだが、すぐに気をとりなおして、ドアのにぎりに手をかけると、いきなりぐっとむこうへ押しながら、
「だれだ! そこにいるのは!」
 そのとたん、へやのなかでは、ドタバタといすやテ芝毪摔证膜胍簸筏郡ⅳ浃皮坤欷櫎橥猡丐趣婴坤筏俊
「ちくしょう、ちくしょう!」
 おじさんはむちゃくちゃにドアを押したが、むこうから、つっかいぼうがしてあるらしく、十センチほどしかひらかない。
「だめだ。良平、庭のほうからまわろう」
 かって口から庭へ出ると、裏木戸があけっぱなしになっている。ふたりはすぐそこから道へとびだしたが、あやしいものの影は、もうどこにも見当たらない。
 しかたなしにふたりは、応接室の窓の下までひきかえしてきたが、そのとたん、ギョッとしたように息をのみこんだ。
 窓のなかから、まだすすり泣きの声が聞こえてくるではないか。
 良平もおじさんも、それを聞くとゾッとしたように顔を見合わせたが、すぐつぎのしゅんかん、おじさんは窓をのぼって、へやのなかへとびこんだ。良平もそれにつづいたことはいうまでもない。
 おじさんが電気のスイッチをひねったので、応接室はすぐに明るくなったが、見ると、そこにはひとりの少女が、いすにしばられ、さるぐつわをはめられて、目にいっぱい涙をたたえ、むせび泣いているではないか。
 おじさんはいそいでそのナワをとき、さるぐつわをはずしてやると、
「きみはいったいだれなの。どうして、いまごろこんなところへやってきたの?」
 おじさんは、できるだけやさしくたずねたが、少女はただもう泣くばかりで、なかなかこたえようとはしないのだ。
「良平、おまえこの子知ってる?」
「ううん、ぼく、知りません。いままで一度も見たことのない子です」
 まったくそれは見知らぬ少女だった。としは良平とおないどしくらいだろう。みなりこそまずしいけれど、かわいい、りこうそうな顔をした少女だった。
 おじさんはまた、なにかいいかけたが、そのときドアを外からたたいて、
「まあ、欣三さん、良平、どうしたの。なにかあったの。いまのさわぎはどうしたの?」
 そういう声はおかあさんである。見るとドアのうちがわには、大きな長いすが押しつけてある。おじさんはそれを押しのけながら、
「アッハッハ、ねえさん、なにもご心配なさることはありませんよ。どろぼうがはいったのですがね、かわいいおきみやげをおいて、逃げてしまいましたよ」
「まあ、そしてなにかとられたの」
 おかあさんのそのことばに良平は、はじめて気がついたように、へやのなかを見まわしたが、すぐアッと叫ぶと、
「おじさん、おじさん、やっぱりそうだよ。どろぼうはあの剑颏踏工撙摔郡螭坤琛
 その声におかあさんもおじさんも、ハッと壁のほうをふりむいたが、そのとたん、ふたりともおもわず大きく目を見張った。
 ああ、どろぼうはあきらかに、悪魔の画像をぬすみにきたのである。
 しかし、あの大きながくぶちから、はずすことができなかったので、ふちから切りぬいていこうとしたのだろう。半分ほど切りぬかれたカンバスが、ダラリとがくぶちからぶらさがっているのだった。

     どろぼうの忘れ物

 おじさんが電話をかけると、

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